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zoom RSS 【乗車ルポ】 ★ 美しい夜汽車の思い出 幾星霜 〜 寝台特急“日本海”の夜 〜

<<   作成日時 : 2012/03/09 09:00   >>

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ずっと“白鳥”に乗りたいと思っていた。日本海縦貫線の。

“白鳥”なきあと、その思いは、同じルートを辿る“日本海”へと変わった。

いつか乗りたいと思っていた。

2012年の年始には、“日本海”に乗る条件が整いそうだったので、準備していた。

だから、自分は決して葬式鉄なんかではない。乗車のタイミングが、たまたま廃止報道と時期が重なっただけだ。強がりではなく、本当に、そう。



この記事は、上の動画(サウンド)をお聴きになりながらお楽しみ下さい。


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“日本海”はB寝台車と、今では珍しい開放型A寝台車による編成。食堂車はもちろん、ロビーカーやラウンジすらない。冬だから良いが、シャワーを浴びることも出来ないので、乗車前に新大阪の温泉施設で入浴を済ませておく。この時点で、気分はすっかり旅ムード。駅弁にお菓子を用意して乗車に備える。気が早いのか、時間を持て余してしまい、構内の喫茶店で時間を潰す。元日なので、開いているお店は限られていた。お店の造りは東京と変わらないが、カウンター両サイドの隣人が、自分に気さくに話しかけてくる。東京在住の筆者にとって、旅の始まりはいつも東京だが、今回の旅は、いつもと違う。

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そう、大阪から始まる。

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“日本海”の大阪駅入線は発車の6分前とやや慌ただしい。本当は、編成の前から後ろからの写真を撮りたいが、旅支度に駅弁が加わり機動力が劣るため、機関車側からの撮影は諦め、編成後部から客車側を写すだけにした。カマ側には、多くのファンがスタンバイしている。11番線には特急“サンダーバード35号”が在線中で、なかなか“日本海”が見通せない。


ひととおり撮影を済ませ、列車に乗り込む。これから1000kmを超える旅のスタートとは思えない、気忙しい始まりであった。

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上段にある自分のベットに上がる頃には、列車は起動し、車内アナウンスも始まっていて、録音ファイルのハイケンスのセレナーデ、頭の部分が欠けてしまった。詳しい案内は、新大阪発車後に行われたが、その際にはハイケンスのセレナーデが鳴らない。8両編成で、前から10号車・9号車の順で最後部が1号車、8・7号車は欠車であることが伝えられる。年末年始期間中なので欠車は意外だったが、元日は需要が少ないのか。旅客案内上の編成両数とは別に、もちろん、電源車と機関車も編成に組成されているため、この日の“日本海”は10両編成だ。

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アナウンスの録音が終わると、荷物の整理。車内で使う物をあれこれ並べていたら、荷物にベットの5分の1を占有されてしまった。ただ、その都度バックから取り出すと、特に深夜など、周囲の乗客に迷惑がかかるので、使う物は予め取り出しておいた方が良い。寝静まると、ビニール袋のガサガサ音だって気になるものだ。

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「ベットの5分の1を(荷物に)占有されてしまった」…と書いたが、決して大袈裟ではない。冬季の日本海側は悪天候に見舞われ、“日本海”は大幅遅延などの影響を受けることが多い。そのため、駅弁やお菓子類を多めに買っておいたからだ。寒くて困ることがないよう、使い捨てカイロも大量に買い込んでおいた。結局、当日の“日本海”は定時運転で、定刻に青森駅に到着したため、余計に買い込んだ分は、いずれも余計なままで終わってしまった。でも、あれこれの場面を想定し、それらに備えようとする、その行為は、案外楽しい。

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新大阪を出ると、レチさんが車内改札にやって来た。カーテンを閉めていたので「11番上段様〜」と呼びかけられるが、聞き慣れない二人称に戸惑いを覚える。親切なレチさんで、近くの人があれこれキップを選別していると、「よろしかったら、袋ごと(キップ入れ)お預かりしますよ〜」と言っているのが聞こえた。親切だ。食堂車やロビーカーなど、ベットの他に付加価値がない“日本海”だが、クルーのこういうソフト面で、列車の旅の印象が大きく変わる。

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京都から乗車した隣人は、翌朝鶴岡で下車するようで、レチさんに起こしてくれるよう、お願いしていた。鶴岡着は翌朝の03:35着。翌朝の話を先にしてしまうと、レチさんは約束通り、鶴岡到着20分ほど前にやって来て、カーテン越しに隣人に声を掛けていた。ところが、隣人はなかなか起きない。レチさんは、隣人氏のカーテンを開けるわけにはいかないようで、「困ったナ」…と漏らしつつも、根気よく、「12番上段様〜」と何度も呼びかけた。数分して、隣人氏がようやく気付いたようで、レチさんの「12番上段様、鶴岡、あと10分ですよ」の言葉に、大慌てで下車していった。一部列車では車内改札が省略されるなど、現代は省力化の時代に、久しぶりに、列車内でヒューマンなやり取りを見たような気がする。

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京都18:20着。B寝台の上段には窓がないので、いつもの大阪−京都間とは、また違った行程に思える。カーテンから顔を出せば、通路の窓が見えなくはないが、ずっと顔を出しているわけにも行かない。旅の進み具合は、サウンドだけが頼り。LED案内表示器などないし、今どこを走っているのか、進み具合を自分できちんと刻んでおかないと、位置関係が分からなくなる。

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それほどお腹が空いたわけではないが、他にやることがないので、駅弁を食べる。乗車前に大阪駅のホームで買った“こてまり弁当”。和風の上品なお弁当で、天ぷらは自分好みの塩を付けて食べるタイプ。退屈しのぎに食べたにしては、食後は心地良い充実感に包まれた。

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近江塩津で19:21着/19:27発と6分間の運転停車。ここで特急“サンダーバード37号”を退避する。だが、運転停車について何もアナウンスはなく、何事もなかったかのように、列車は動き始めた。“サンダーバード37号”は大阪を“日本海”の25分後に発車し、京都でその差を19分にまで縮め、敦賀には6分先着してしまう。「特急」が「特急」に追い抜かれるのだから、寝台特急“日本海”の立場はないが、急ぐ旅ではないし、車中の誰もが気にしていない。「特急」が「特急」を追い抜く……サスペンスのトリックに使えそう。

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敦賀が近付いた辺りで、編成後部に行ってみる。ブルトレはご存知のように緩急車から後部展望ができる。運転所には用途廃止になった419系が見える。敦賀では、2日前に“日本海”を駅構内で撮影した。雪が積もり、心底寒い中で列車を待ったのだが、“日本海”のことで頭はいっぱいで、寒さを忘れていたけれど、いま、こうして暖かい車内から外を見ると、外はやっぱり寒そうだ。

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大阪を出てまだ2時間だが、ベットにいると時の流れは遅く、もっと長い旅をしたかのような気がする。敦賀19:41着/19:43発。終着の青森までまだ13時間もある。でも、退屈なのは覚悟の上でこの列車に乗ったんだ。天気予報だと、日本海側の天気は悪くなるそうだが、列車は今のところ定刻で走っている。

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福井は20:25に到着し、20:26に発車。時刻表上では僅か1分の停車時間に見えるが、客車列車なので、レチさんとウテシさんの間で無線交信を行なってからの起動となる。スローモーと言ってしまえばそれまでだが、客車列車ならではの流儀で、風情すら感じる。

福井の次は加賀温泉。20:52着。加賀温泉が近付いた辺りで、車内を探索する。

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デザイナーを起用した、まるで列車内であることを感じさせない造りの車両が多くなってきた昨今、24系客車の車内は、機能的というかとても無機質に映る。特に、車両によっては、顔を洗うのにボタンを押し続けなければお湯やお水が出ず、思うように顔を洗えない洗面台があって、難儀した。一度、シンクにお湯を張らなければならず、不便だ。筆者が乗車したオハネ24-7は白帯車で、アコモ改善されていないところに理由があるらしく、金帯車の洗面台は改善されているようだった。

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ところで、冷水器の設備が今でも残っているのには、逆に目新しさを覚えた。いつの間にか消えてしまったこの設備も、以前は優等列車には当たり前の設備だった。実際、乗車前に温かい飲み物ばかり買い込んだは良いが、車内の暖房はとてもよく効いていて、冷たい飲み物が欲しくなったので、冷水器のお水は有り難かった。

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車内暖房も、国鉄時代の設計ならではの、とてもよく効く、堅実なタイプで、温々とした心地良さは、新系列車両に見られる、座っていてお尻だけが温かい暖房器には真似の出来ない芸当である。今ではすっかり固定窓が主流だが、24系の設計時には、固定窓だとあれこれ不安があったのか、ガラスを割るためのハンマーが備え付けられているあたりに、時代を感じる。

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加賀温泉に到着。ここで後続の特急“サンダーバード39号”を退避する。ただし、近江塩津と異なり客扱いが行われ、ホームに出ることが出来る。ホームでは、たばこを吸う人、自販機で飲み物を買う人など、みな、僅かな停車時間を楽しみにしていたかのように、ホームに出た。中には、備付けの浴衣姿のままホームに出る人もいる。遠慮するよう、アナウンスされていたのにもかかわらずである。それよりなにより、真冬でっせ…。浴衣のままじゃ、寒いでしょ?

自分も、自動販売機で冷たい飲み物を買う。車内が暖かくて、冷たい飲み物が欲しくなった。

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そして、先頭に行ってみると、多くの人がEF81を写真に収めている。一般の方が記念撮影したりして、なかなか思うように行かない。通過列車に向かって、フラッシュを放つ無遠慮な輩に閉口する。結局、あっという間に発車時刻となり、近くのドアから車内へ戻る。5分は長いようで短かった。

加賀温泉の5分停車という「ビックイベント?!」が終わり、いよいよ“日本海”の車内でやることがなくなった。大人しくベットに戻ることにする。

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半数以上のカーテンは閉まっているが、室内灯はまだ明るいままで、横にならないでいる人も多い。B寝台車には更衣スペースがあるが、備付けの浴衣に着替える人は少ない。ジャージやウィンドブレーカーなどのスポーツウェアを着ている人が多い。着替えずにそのままの姿で寝ることが出来るし、途中停車時間がある駅でホームに出る場合などもそのままで行けるので、便利そうだ。こうしてみると、みな、“日本海”に乗り慣れているようだ。

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退屈になってきたので、ベットでパソコンを広げドラマの動画を観る。“日本海”の車内で観ようと、ドラマをノートパソコンに転送してきた。車内はとても静かで、カーテン1枚でしか仕切られていない開放式の空間であることを忘れさせてくれるほど、プライベートが確立出来ている。

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ベットで大人しくしていると、なんだか少しだけスースー寒く感じ、足下に使い捨てカイロを貼る。たくさん着込んできたし、先ほどまで国鉄型車両の暖房器を誉めていたクチなのに、なぜだか足下だけが心もとない。布団に入ると、そのまま朝まで寝入ってしまうのではないかという懸念も、杞憂に終わりそう。加賀温泉を出てしばらくすると、雨が降り始め、金沢近くではその降りが強くなってきた。車窓は利かないが、ベットの上段にいると、屋根が近いため雨の強弱が案外容易に分かる。まるでトタン屋根を想像する。翌朝、青森駅で自分が乗った車両の屋根を見たら、何箇所か継ぎ接ぎされていた。

金沢には21:29着。パソコンで視聴中のドラマに見入ってしまい、列車の中にいることさえ忘れていたが、特徴ある音色の発車メロディーが微かに聞こえてきて、思わずハッとさせられる。21:31に“日本海”は金沢を発車した。

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しばらくすると、車内は段階的に減光し、「おやすみ放送」が流れる。次の停車駅・高岡の到着時刻が22:02着なので、高岡を1日の区切りにしても良さそうだが、考えてみれば“日本海”の高岡乗降客数は恐らく数人程度のはずで、車内アナウンスの必要性はないのだろう。大阪からカーテンにマイクを固定して、車内アナウンスをずっと録音してきた。アナウンスがいつ流れ出すか分からないため、駅到着の数分前から、スピーカーの前でずっと張っている必要があったが、お休み放送をもって、しばらくその緊張から解放される。高岡では起動時に、すごい衝動があって驚いた。

高岡の次は富山が22:18着/22:20発、魚津に22:39着/22:40発と、富山近郊の各駅に停車していく。個人的には、この3駅の停車駅を富山に集約すれば良さそうに思うのだが、“日本海”は、日本海沿いの皆さんに必要とされている列車であり、需要は案外あるのかもしれない。そして、23:20に糸魚川に停車するのだが、糸魚川における時刻表上の発着時刻は同時刻で、停車時間が最小限に切り詰められるようになる。糸魚川の次は直江津だ。
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直江津は23:50着/23:57発と、7分間の停車時間があり、これもまた道中の“目玉イベント”?!として楽しみにしていた。

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では、その直江津で、ホームに出て何をしたかといえば、編成後部の写真を専らパシャパシャ写しただけ。今にして思えば、7分もあったのだから、ホーム反対側からの写真や、機関車側からなど、あれこれ写せただろうに、せっかくの機会を活かすことなく終わった。

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“日本海”は直江津を発車。深夜0時ということで車内は静まりかえっている。自分も寝ることにした。

美しい思い出の続きはこちらをご覧下さい。

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【乗車ルポ】 ★ 美しい夜汽車の思い出 幾星霜 〜 寝台特急“日本海”は終着・青森をめざす 〜
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コメント(7件)

内 容 ニックネーム/日時
乗って来られたのですね、夜汽車の雰囲気が伝わって来ます…♪
としおちゃん
2012/03/09 10:34
どうも、こんばんは(^-^)
夜汽車の雰囲気は、まさに昔ながらの鉄道ですね。
けんまる
2012/03/09 21:37
としおさん、けんまるさん、お二人ともコメントをお寄せ下さりありがとうございます。

時間があれば、毎日でも、夜行列車の中で過ごしたいと思いますが、21世紀になって、夜行列車による移動も、あまり現実的ではなくなってしまいましたね。

“日本海”ラストまで、走り抜いて欲しいと思います。
ツキだっ!
2012/03/13 08:52
こんばんは。

「日本海」の魅力を余すところなく記録されているのが、素晴らしいと思いました。

続きの記事も拝見しますね。
京阪快急3000
2012/03/21 20:28
京阪快急3000 さん、コメントをお寄せ下さりありがとうございます。

記事、引き続き後編もご覧下さいね。
ツキだっ!
2012/03/23 09:51
こんにちは。「日本海」写真素敵ですね。夜の撮影がいい雰囲気をだしてます。
まぼちゃん
2012/06/16 16:00
まぼちゃんさん、コメントをお寄せ下さり、誠にありがとうございます。

諸般の事情で、お礼を申し上げるのに、2か月弱も間が開いてしまいました。大変失礼致しました。
ツキだっ!
2012/08/02 15:49

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