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zoom RSS 【乗車ルポ】特急“あさぎり6号” 小田急ロマンスカーとして活躍するJR371系の最後の姿

<<   作成日時 : 2012/01/09 15:44   >>

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あれこれ噂の絶えなかった御殿場線の特急“あさぎり”だが、昨秋の371系“あさぎり”運用撤退報道に続き、年末のプレスリリースで、各列車とも運転区間が御殿場までに短縮される旨が発表された。これを機会に、最後にもう一度、沼津から小田急新宿まで、371系で乗り通してみたくなった。

“あさぎり”は、春以降小田急ロマンスカー・MSEに変更される。同時に、小田急側からも、ロマンスカー・RSEが廃車されるとの発表もなされた。371系も、小田急20000型も、車齢20年強と、経年はまだ若いが、371系は転用され、RSEは廃車となる。

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これらの背景には、小田急のATS更新が絡んでいる。すなわち、JR東海と小田急の両社は、特急“あさぎり”の現行車両への設備投資を見送ったのだ。そのため、今春のダイヤ改正は、MSEによる新型への置き換えという発展的なイメージよりも、どうしても消極的な施策としての印象が強い。

MSEは、箱根・江ノ島に東京メトロ、そしてJR東海へと、特急のどの運用にも充当できる文字通り“マルチ”な車両として、現場ではますます重宝するかもしれない。小田急4000系(E233系準拠)と機器が共通化されている点も、他社への直通を有利にしている。

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しかし、MSEにはVSEほどのステータスが感じられない。ロマンスカーの売りである展望室がないのが、マイナスポイントで、特急車両にも関わらず機能的に映る。“あさぎり”に充当されるMSEは6Rとのことで、沼津方先頭車は前面展望が楽しめるが、新宿方先頭車は幌連結が考慮された貫通型先頭車となる。余談だが、御殿場線の有名撮影地における“富士山バック”の構図で、MSEの流線型先頭車は期待できない。これもまた残念。

前置きが長くなったが、旅を始めよう。

沼津で“あさぎり”の特急券・乗車券を買う。自動券売機で、新幹線や“青空フリーパス”は買えるのに、“あさぎり”は用意されていない。仕方がなくみどりの窓口で求める。“あさぎり”はマルスに収録されていないんだっけ。このあたりが、“日光”“きぬがわ”と異なるところで。この日は小田急線内で踏切事故があったため、小田急は13:35まで特急券の販売を見合わせていた。そのため、沼津入りの前に新宿口で求めようと思っていたが、購入出来ないままやって来たのだが、無事に手に入れることが出来た。

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発券された切符が面白く、「特急券・乗車券」と「指定券」の2枚が渡された。「指定券」の金額部分は\***表示となっている。前述のように、“あさぎり”がJRのマルスに組み入れられていない故なのか。いつも、小田急側でしか買わないので、初めて見る様式に戸惑う。イジリ―岡田に似た窓口氏に「ICカードで乗車出来るか」と尋ねたところ、「うぅ〜ん」とのこと。ダメだとも、知らないとも受け取れるハッキリしない返事にこれまた戸惑う。結局、乗車券も併せて購入した。

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ラチを通過するにあたって、今度はその2枚様式の切符を自動改札機にどのように入れるべきか?「2枚投入可」とあったので、重ねて入れてみたところ、「ピンポ〜ン!」。ありゃりゃ、鳴っちゃった。有人改札へと案内される。結局、自動改札機には「特急券・乗車券」のみを投入すれば良いんだと。あ〜ぁ、ややこしいわ〜。

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発車前に編成外観を眺める。いつも目にする371系だが、小田急線内の特急停車駅はどこも混雑していて、こうしてゆっくりと外観を眺める機会は少ない。整備水準は高く、経年20年とは思えない。ホワイトがとても透き通るような色をしていることに気付く。思わずうっとりしてしまう。編成中央のダブルデッカーも存在感があり、好景気に沸いていた、楽しい時代の産物であることを思わせる。

0406M・特急“あさぎり6号”は沼津を15:30に発車した。発車後、運転所の辺りまで、“あさぎり”はクネクネとした駅構内をソロリソロリと進む。これが案外長く続く。

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ようやく、制限が解除されて加速する。進行方向左手には富士山が展がる。371系は、時刻表では「ワイドビュー車両で運転」と案内される。“ワイドビュー”と聞くとキハ85系のイメージが強く、371系に対してはどうもしっくりこないが、なるほど、大きな窓は富士山を見るのに不自由なく、“ワイドビュー”に相応しい。

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一方、富士山と反対側の車窓には、371系のシルエットが、列車と並走しているではないか。流線型の特徴ある先頭部と、大きな窓が、そのまま影になって、なかなか印象的である。窓の下辺が、着席している人のヘソの辺りまであり、これが心地良い開放感を生み出してくれるのだ。

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沼津から新宿まで“あさぎり”を乗り通したのは、20年前に乗って以来。371系デビュー2年目の春のことで、中学の卒業記念に、友人と乗った。あとは専ら区間利用のみで、特に御殿場線内で乗る機会は数えるほどしかない。およそ20年前に、“あさぎり”は沼津延長という発展を遂げたにも関わらず、今回、運転区間が縮小してしまう。沼津だと、東海道本線経由の方が本数が多くて気軽だし、普通列車でも所要時間はさほど変わらない。このあたり、“特急・東海”が廃止されてしまったのと、事情が似ている。沼津―御殿場間の自由席設定とか、対応策が講じられたが、“あさぎり”も思うように育たなかった。

余談だが、この沼津―御殿場間の自由席設定について、高校生の頃に鉄道雑誌に記事を投稿したら、掲載されたことがある。たまたま御殿場線に撮影に行って目にした模様を投稿したのだが、掲載誌が贈られてきて、飛び上るほど嬉しかったのを覚えている。なので、筆者にとって“あさぎり”の自由席は感慨深いものがあるのだが、今春の運転区間縮小に伴い、その自由席も見られなくなる。

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投稿の話題をもう一つ。371系に事故や運休が発生すると、“あさぎり”は新松田まで、小田急のロマンスカーが代走する。RSEが充当されれば、代走もスマートだが、RSEの場合、2本中のもう1本は、箱根特急に運用されているので、突発的な場面には対応出来ない。そのため、371系の代走は、HiSEなどが充当されるケースがほとんど。なお、HiSEやLSEには、“あさぎり”の愛称幕が装填されていないため、“特急”や白幕が表示される。中学生の頃、代走シーンを初めて目撃し、これまた、鉄道雑誌に記事を投稿したら、掲載された。前述の、自由席の投稿と言い、筆者にとって“あさぎり”は思い出多き列車だ。

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特急“あさぎり6号”は、御殿場線を快調に飛ばす。かつては東海道本線の一部だっただけのこともあって、371系の110km/h走行にも無理を感じない。ただ、単尺レールなのでジョイント音を刻む。小田急線内はロングレールが一般的なので、リズミカルなジョイント音は、御殿場線内を印象付ける特徴と言えよう。また、各駅構内が1線スルー化されておらず、駅通過の際に大きく減速するのが、亜幹線の特急であることを改めて思わせ、高速化ばかりを追求した幹線の特急とは違う。

沼津発車時点で、筆者が乗車した1号車の乗客は10人程度。最初の停車駅・裾野で、乗車はさほどなかったが、御殿場では、グループ連れが乗車してきて、車内に活気が生まれる。ゴルフの帰りなのだろうか。ビジネス特急とは異なるムードに包まれる。車内も6割弱が埋まり、ダイヤ改正後の“あさぎり”が、廃止の道を歩まず、御殿場以東で存続した理由が分かる。なお、筆者が乗車したのは土曜日のことで、平日の動向はまた違うのだろう。改正後、平日の“あさぎり”は運転本数が1往復削減される。

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ここで改めて371系の車内に目を向ける。車内のトーンは、JR東海の在来線特急と同様で、重厚さは感じないが、明るい。座席のクッションが快適で、筆者の体にフィットする。経年20年になるが整備水準が高い。シートピッチが広く、リクライニングも傾斜角度が深く、これなら夜行列車でも運用できそう。是非、“ムーンライトながら”に充当してもらいたいところだ。371系の居住性は、筆者個人の感想としては、MSEを上回る。MSEは、軽量化されたシートが揺れに共振し、なんとなく納まりが悪く、通勤列車と座り心地は変わらない。

御殿場を出て、車窓は今までと違って山間深くなる。夕暮近く、コントラストがないため、鮮やかさはないが、紅葉で木々が色付いている。自然の影響を受けやすいように映るが、御殿場線は案外タフ。海沿いよりも強く、自然現象による運休は少ない。そのため、九州ブルトレの迂回ルートとしての活用が検討されたこともあった。

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松田で、小田急の乗務員と交代。ここから先は小田急線を進む。OJ切り替え装置と称するマスコンキーによる判別によって、運転台の各種設定は、自動的に切り替わる。設定が小田急側に切り替わったことは、スタフ差し下の列番設定器に電源が入ったことから、客席にいながら分かる。

列車は、松田連絡線を進む。

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この松田連絡線。全長僅か363mなのだが、無理して御殿場線と接続した事情が見て取れる、窮屈な線形となっている。両社との、信号・保安設備の違いのほか、デッドセクションも加わって、急曲線・急勾配と徐行を強いられる区間でありながら、ノッチすら思うように入れられない。非電化時代は、ノッチの問題は関係なかったが、小田原授受線なきあと、甲種輸送もこの松田連絡線を介して行われるようになり、機関車列車では、さらに難しい運転技術が要求されよう。さらに,小田急小田原線の本線との分岐部分は逆カントになっているそうで、連絡線上を最徐行で通過する。東武の栗橋に比べたら、簡素な連絡線に映るが、このように、ちょっとした難所である。なお、デッドセクションが介在するが、“あさぎり”の室内灯は消えない。

この松田連絡線についてもう少し書くと、昭和30年の連絡準急運転開始のために建設されたものだが、戦時中にも、小田急線と御殿場線を接続する計画があって、終戦時点で橋脚が1基だけだが完成していたそうだ。だが、この橋脚は現在の松田連絡線に流用されてはおらず、後に撤去された。終戦後も、大東急が御殿場線を電化して、経営委託するといった内容が運輸省でも検討され、実際に大東急による免許申請も行われたそう。このことから、小田急は、ずっと永いこと沼津という地に憧れを抱いていたことを窺い知る。それが、平成になってようやく実現したわけだが、今春から、小田急の列車は、憧れの地・沼津に顔を見せなくなってしまう。

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このように、僅か363mの連絡線を通じて、いろいろなロマンを抱いた時代があった。合理化・省力化の現代。現実に追われ、あれこれ夢を描くことすらなくなってしまったけれど、昔は、鉄路にロマンを求め、それがまた、楽しみでもあった。371系やRSEは、それらロマンが実現したひとつの形でもある。

話を“あさぎり6号”に戻す。

レチさんは、連絡線を通過すると、早速車内巡回に出た。ロマンスカーは、座席の発売状況と照合する方式が採用されていて、イレギュラー以外は車内改札がない。JR東海の区間でも、車内改札はなかった。一方で、あまり広報されていないが、特急券を持たずに乗車すると、300円が加算される。しばらくすると、2本のMSEとすれ違った。

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小田急線に入って、車内販売がないことがアナウンスされる。そう言えば、JR東海内では、車内販売について触れていなかったが、Jダイナーは、371系より一足先に、“あさぎり”の車内販売から撤退している。

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本厚木で多くの乗車があって、筆者が乗車した車両は座席が埋まった。暗くなり車窓も楽しめなくなったが、ここから先は、いつも通る区間。リクライニングを大きく倒し、シートに身を埋める。371系は界磁添加制御方式だが、特急として走る分には直列段の粗いステップが気にならない。時々、床下から「スパン!」という音が聞こえるあたり、抵抗制御の車両であることを思わせ、ひと世代前の形式であることを認識させられる。冬なので、窓側に座るとやや寒い。

“あさぎり6号”は、相模大野の通過線に勢い良く入る。だが、勢いが良いのは入るときだけ。通過線の出口は分岐器の分岐側になっており、速度制限が伴う。町田に停車すると、次は終点・新宿である。MSE化後の“あさぎり”は、新百合ヶ丘と相模大野が新たに停車駅となる一方で、町田は通過となる。相模大野に停車するのは、分割併合が行われるためだ。町田は小田急線内乗降第2位の駅で、特急利用者も多いが、ここ数年、町田に停車するロマンスカーは減少傾向にある。EXEデビュー当時、町田に分併設備を設置して、分併に対応していたが、町田―相模大野の線路容量が逼迫してしまったので、町田での分併は中止された。

時折、パンタが離線してスパークが青白く光る。

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新百合ヶ丘・経堂と、緩行が退避する駅が差し掛かると、追行運転になりがちだが、本線が開通すると、水を得た魚のごとく、勢い良く通過する。371系が小田急に初めて乗り入れて来た頃は、まだ地上の複線で、複々線区間は東北沢―代々木上原の1駅間のみであった。地平時代の梅ヶ丘で見た、夕陽に赤く照らされた371系の姿が忘れられない。371系が踏切を通過する時の、ダブルデッカーの存在感は巨大で、思わず仰け反りそうになったものだ。

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“あさぎり6号”が終点・新宿に差し掛かる。進行方向右手には、東武特急・“スペーシア”が長距離列車ホームに停車しているのが見える。“スペーシア”と“あさぎり”は、JRと相互直通する、同じ性格の特急列車だ。新宿に乗り入れる本数も同じだが、“スペーシア”は、休日を中心に臨時列車が増発されるなど、なかなか好調のようだ。目的地が、御殿場・沼津と、世界遺産の日光とでは、マーケットが異なり、性格が似ているように見えて、両列車を単純に比較するのは無理な話しだ。

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“あさぎり6号”は、17:29・定刻に新宿駅に到着した。

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出口が1箇所しかないのと、乗車率が高かったこともあって、降車にやや時間がかかった。とても、今後運転区間や本数が縮小される列車に思えないほど、新宿に近付くにつれ、“あさぎり6号”は活気に満ちていた。


− 371系関連記事 − 
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 ・ 私たち、少数派
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 ・ 乗車ルポ 371系・ホームライナー静岡3号


【参考文献】 鉄道ピクトリアル 1991年 7月臨時増刊号 <特集>小田急電鉄
        鉄道ピクトリアル 1999年12月臨時増刊号 <特集>小田急電鉄
        鉄道ピクトリアル 2010年 1月臨時増刊号 <特集>小田急電鉄

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コメント(5件)

内 容 ニックネーム/日時
ルポ、楽しく拝読いたしました。
「あさぎり」運転短縮ですか〜
以前、私が新宿から沼津に乗った時も、御殿場から先、沼津まで乗っていたのは編成中4〜5人でしたから・・・仕方ないのかもしれませんね。
ドラ猫
2012/01/09 16:05
在来線版100系ですね。
富士山バックの写真が格好いいです。
としおちゃん@根室
2012/01/09 23:16
お2人とも、コメントをお寄せ下さり,ありがとうございます.お礼を申し上げるのが遅くなりまして、大変失礼いたしました。
ツキだっ!
2012/01/18 23:02
どうも、お久しぶりです(^-^)
RSEが廃車となるとはもったいないですね。
けんまる
2012/01/20 23:18
けんまるさん、コメントをお寄せ下さりありがとうございます。
RSEは小田急では廃車になりますが、富士急行が譲受に向けて交渉中とかで、今後の動きが気になります。
ツキだっ!
2012/01/24 08:49

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